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出版状況クロニクル 17 (2009年8月26日〜9月25日)

小田光雄


出版社・取次・書店という近代出版流通システムは明治半ばに立ち上がり、後半にかけて成長を遂げていく。日本の百貨店もまた明治後期に成立し、それ以後急速に発展し、各地方都市にも及んでいった。
いずれも近代が同時代に生み出した都市や街の装置であった。しかしどちらもが衰退の危機にさらされている。先月にも報告したが、8月の百貨店売上の落ちこみは前年比8.8%減であり、65年に統計を取り出して以来のマイナスになっている。
出版業界の落ちこみも深刻で、8月も平均数字で示される以上の異常なまでの高返品となって、出版社にはね返っている。この状態が年末まで続けば、出版業界全体の体力そのものが失墜してしまうだろう。それらを背景にして、様々な出来事が出版業界に押し寄せている。

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1.  ジュンク堂が、文教堂GHDの実質的創業者で、前会長嶋崎欽也などが所有する株式を取得し、24.95%を占める筆頭株主になった。文教堂のプレスリリースの「交渉にいたった経緯」を下記に示す。

「文教堂は首都圏を中心に186店の書籍、雑誌の専門店および、DVD、CD、文具、ホビー等の複合店舗を展開しており(20年8月期連結売上高 51,207百万円)、また、ジュンク堂は専門書を中心とした都市型大型店舗を全国に展開しております(21年1月期売上高 42,169百万円)。
出版書店業界は昨今の景気低迷の影響によって、経営環境は厳しく、市場が縮小しておりますが、大手チェーンによる市場占有率は高まっており、将来を見据えた業容の拡大と、経営の効率化が急務であると判断いたしました。
文教堂はベストセラー及び売行良好書の売上において国内最大規模のシェアを持ち、ジュンク堂は売場面積3000u以上の超大型店の運営および専門書カテゴリにおいて類のないノウハウを保有しております。
両社の協力関係においては補完的且つ相当の相乗効果が期待できる上、経営の効率化におきましても販売および在庫データの共有化等による販売政策の連携や情報システムおよび店舗の共同開発、人材の相互研修を図ることなどを予定しており、新たな経営環境に即応すべく機動的な関係構築を目指してまいります。
また、大日本印刷株式会社(以下、DNP)はジュンク堂の発行済株式総数の51%を保有する連結親会社であり、文教堂としても書籍販売市場の活性化を目的として、DNPグループとの協力関係に関する協議を開始いたします」

[ まずはこの再編についての第一印象を述べてみる。非上場会社による上場会社の買収という事態も含めて、外食産業にたとえれば、都市型専門料理店が郊外型ファミリーレストランを買収したようなイメージがつきまとう。それに加えて、プレスリリースの末尾にあるように、背後にDNPが控えていると判断するしかない。
本クロニクルでも一貫して、文教堂をめぐるトーハンの第三者割当増資、ゲオとの提携、出版社などによる資本参加を追跡してきた。しかしジュンク堂による買収は予想外で、両社のトーハンとの関係も含めて、かなり複雑なねじれ現象が起きているのだろう。
文教堂は80年代型郊外店の筆頭で、トーハンと提携し、急速な全国展開を進め、90年代前半に株式上場も果たし、日本最大のナショナルチェーンになった。だが近年は複合型書店、ショッピングセンター内書店との競合もあり、2期連続の赤字に陥り、苦境に追いこまれていた。
株式の移動からみれば、文教堂の筆頭株主がジュンク堂で、トーハンが第3位となる。ジュンク堂は取次を大阪屋からトーハンへとシフトさせていると伝えられているが、この買収はジュンク堂とトーハンの連携なくしては成立しないものだろう。それにトーハンとの関係からすれば、トーハンが丸善の第2位の株主であり、丸善による買収というスキームもあったはずである。買収金額は明らかにされていないが、この資金問題も含めて、DNPグループ内で様々な絡みがあったことは確実だろう。なお角川グループHLDは第5位の株主である。
ある報道によれば、ジュンク堂の工藤恭孝は頼まれたからだと語っているという。だが頼んだのは誰なのかは語っていないようだ。『出版状況クロニクル』で、工藤がジュンク堂の買収を望んでいたことを記したが、嶋崎もそれを願っていたのかもしれない。
ただ今回の株式移動は個人の株式の売却のために、文教堂GHDの資本増強とはならず、今後の第三者割当増資などを注視すべきだろう ]

2.  丸善の中間期決算が発表された。売上高475億円で、前年同月比8.6%減。赤字は3億1000万円。とりわけ店舗事業が不振で、167億円と同10%減になっている。

[ 書籍部門に関するかぎり、その落ちこみにはまったく歯止めがかかっていない。DNPグループ入りしていなければ、事態は深刻化するばかりだっただろう。
9月末にジュンク堂との業務提携を発表するとしているが、文教堂との関係はどうなるのだろうか ]

3.  DNPの10年3月期第1四半期の連続業績の発表もなされた。売上高は3804億円で前年比4%減、営業利益は94億円で50%減、当期純利益は20億円で79.8%減。
丸善、ジュンク堂、TRCなどを含む情報コミュニケーション部門売上高は、1915億円と同17.2%増、営業利益は55億円で32.7%減。
M&Aによる教育、出版流通事業が売上増に寄与しているが、雑誌、書籍とも印刷出版関連が低迷し、本業の不振につながっていると考えられる。

[ しかしこの後、文教堂GHDが傘下に加わったことで、グループの出版物販売金額は雑誌・書籍販売額の10%を超えることになった。丸善、ジュンク堂、TRC、文教堂の合計売上高は2227億円となり、09年の取次ルートの出版物販売金額は2兆円を割ると予測されるので、DNP傘下グループによって優に10%以上が占められることになる。
DNPの一連の再編によって、出版物の川下の資本事情は確かに変わった。それならば、川上の出版社、川中の取次はどのような再編を迫られるのだろうか  ]

4.  取次2社の決算も発表された。
太洋社は売上高419億円で、前年比5.3%減。5年連続減収ながら、4年続きの赤字から、経費節減によって2億円強の黒字決算。
中央社の売上高は244億円で、前年比7.0%減。純利益は700万円弱と、こちらも黒字決算。

[ 99年の両社の売上高を見てみると、太洋社は452億円、中央社は335億円であるから、太洋社は400億円台を保ち善戦していると言えるが、中央社は100億円近く減少してしまっている。
両社とも経費節減による黒字とされているが、その原資は入り組んだ取次同士による配送業務や返品作業の受託などから生み出されているようで、書店市場の販促からの利益を得るということからまったく後退してしまっているように思える。
笑い話のような話が伝わってくる。それによれば、取次の現場で最も利益を出しているのは返品作業部門で、それは返品が出版社に歩戻しを請求できて、最も確実な利益を生むからだという。
それはともかく、太洋社に関して気になることがある。今回の黒字はTRC株をDNPに売却したことによっているようだが、太洋社とTRCの関係はそのまま継続されるのだろうか ]

5.  集英社の売上高は1333億円で、前年比3.1%減、営業損失は2億1100万円と2年連続赤字だったが、最終純利益は6億5500万円。しかし営業損失から当期利益が増加した理由は明らかにされていない。

[ よくわからない決算発表だが、講談社や小学館に続いての赤字決算を避けることからとられた処置のように思える。
内訳をみると、雑誌、書籍、広告ともに落ちこみ、雑誌は3.7%減、広告は16.7%減で、講談社や小学館と同じ構造であり、来期は雑誌、広告不況にさらに拍車がかかり、どうなるか予断を許さない ]

6.  小学館、集英社、小学館集英社プロダクションの一ツ橋グループ3社は、ヨーロッパでアニメのローカライズやマンガ出版を手がけるKAZE(カゼ)グループの全株式を取得し、日本発のコンテンツ情報発信基地とすることで合意。
カゼグループはフランスのカゼ社、及びドイツのアニメバーチャル社で構成され、両社の総売上高は23億円、従業員は60人。
一ツ橋グループは同じ目的の子会社VIZメディアをアメリカに設立していて、この子会社が2年前にVIZメディアヨーロッパ(VME)として進出していた。そこでこれらの3社を統合し、完全子会社として新会社を設立し、VME代表が社長に就任する。

[ ヨーロッパのマンガ市場についての記事を読んだばかりだった。それは『浦沢直樹読本』(「カーサブルータス」)の巻末で、フランス、ドイツ、スペイン、イギリスの「海外でのURASAWA」が紹介されていたからだ。カゼグループやVMEとの関連はわからないが、『20世紀少年』も『モンスター』も『プルートウ』も出版され、熱狂的ファンが生まれているようなのだ。浦沢といえば、小学館なのである。
フランスのマンガ市場は132億円、ドイツはその3、4割で、近年市場は停滞気味だとされている。日本の出版社の本格的な後見によって、ヨーロッパのマンガ市場の活性化とさらなる多様なマンガの紹介がなされれば、本当にいいのだが。
崔洋一の『カムイ外伝』を観てきた。映画とともに白土三平もヨーロッパに上陸させよう ]

7.  『週刊東洋経済』(9/19)が「カンパニー&ビジネス」欄で、「文庫で圧倒的利益を稼ぐ角川グループの才覚」という記事を掲載し、「出版業界軒並み撃沈の中で独り勝ち」の状況を報告している。
それによれば、講談社や小学館の赤字拡大に反して、角川GHDの今期の営業利益は50億円と黒字拡大が予想され、売上高もトップに躍り出ているという。
角川GHDの出版の粗利の6割はグループ7社が手がける17ブランドの文庫が稼いでいて、さらにライトノベルがその6割をあげている。その中で「角川スニーカー文庫」が突出し、『涼宮ハルヒの憂鬱』がその象徴的例となっている。03年に発表された同作は大ヒットしてシリーズ化され、コミック、テレビアニメ、DVD、ゲームソフトへと展開し、グッズ発売、イベント開催、派生タイトルのユーチューブ配信は、アメリカも含むDVD発売へと結びつき、文庫のハルヒシリーズは累計580万部を売り上げる結果をもたらした。
出版から始まって映像化され、雑誌とネットが支え、ゲームに進出し、海外販売に至る展開を「角川の黄金パターン」と呼ぶようだ。このようなマルチコンテンツ化が可能なのは、グループ内に角川映画などの専門会社を抱えているからだ。それに加えて、映像化やネット化まで横断的に考えられる編集者が必要で、それは「メディアプロデューサー」と表現されている。しかしこの記事には次のような指摘が忘れずに書かれていた。
「ただ『黄金パターン』も継続的に“玉”が出なければ、成長はおぼつかない。やはりポイントは、上流の出版の分野だ。」

[ この記事を読むと、この「黄金パターン」が角川春樹が1970年代後半から展開した文庫と映画をメディアミックス化した角川商法の延長線上にあるという感慨が浮かぶ。角川GHD時代になって、その延長線にはっきりとコミック、アニメ、DVD、ゲームなどが組みこまれ、メディアミックスからマルチコンテンツへと進化したとわかる。そしてまた最初の「メディアプロデューサー」が角川春樹だったことは明らかだ。しかし映画にも監督とプロデューサーが存在するように、分業すべきもののように思われる。編集者の「メディアプロデューサー」化は、本来の意味での編集者の役割を解体させる方向をたどり、「黄金パターン」のコアである原点としての作品の発見を妨げる危険性がある。初代「メディアプロデューサー」たる角川春樹がメディアミックスの果てに、コアたるオリジナルな作品の発見に至らなかったように思えるのは、そのことを証明しているのではないだろうか。最後に引用した『週刊東洋経済』の一文もそれを示唆し、警告しているように思えてくる。
またこの記事には『涼宮ハルヒの憂鬱』の表紙は示されているが、作者の谷川流の名前は本文に記されていない。マルチコンテンツと作者との乖離を物語っているのだろうか。そういえば、本クロニクル16で、『日経エンターテインメント!』が挙げている人気作家の多くを知らないと書き、それらの名前を列挙しておいたが、その中にある谷川流が「ハルヒ」シリーズの作者だったのだ ]

8.  晶文社が8月末で、営業、編集部全員を解雇し、品出しは続けられるにしても、実際的に休業したようだ。

[ 晶文社は来年2月に創業50年を迎えるので、それに向けて様々なフェアを用意していたと伝えられている。しかし急にこのような措置に及んだのは、金沢のリブロや松山の紀伊国屋書店の相次ぐ撤退などによる大量返品が押し寄せてきたことも要因のひとつであるかもしれない。晶文社についてはあらためて報告するつもりである。
なお学習参考書等の晶文社出版は存続するとのことだ ]
*誤りでしたので訂正いたします。

9.  草の根出版会が自己破産。
86年設立で、「母と子でみる愛と平和の図書館」シリーズなどがよく知られていて、児童書関連本の出版社の色彩が強かった。98年には年商2億円弱だったが、07年には8000万円、09年には2500万円まで落ちこんでいた。負債は1億1000万円。

[ 私にとって草の根出版会は、創業直後に刊行が始まった、ちばてつやの少女マンガの復刻が印象深い。マンガの復刻としてはかなり早い企画だった。それは「母と娘でみる漫画名作シリーズ」で、『島っ子』全3巻がとても懐かしい。うろ覚えだが、60年代に歌謡曲によって島ブームが起き、その当時に書かれたものではないだろうか。
『日本の出版社』(92年版、出版ニュース社)で調べてみると、社長は梅津勝恵、編集長は伏見雅明となっている。この二人がどこの出版社の出身かわからないが、どちらかが、ちばてつやの人脈に連なっていたのだろう ]

10.  ゴマブックスが民事再生を申請。
負債額は38億円。09年には32億円の年商を上げていたが、経常損失は5億円を超え、その他にも在庫評価損10億円を計上し、債務超過になっていた。借入金は10億円。
前身はポケットブック社で、98年に社名変更し、ベンチャーキャピタルを中心にして増資を重ね、06年に資本金は7億円弱まで拡大していた。同年にはケータイ小説に進出し、「赤い糸」シリーズは330万部のベストセラー化、07年にはゴマ文庫を創刊し、児童書シリーズの「レインボーマジック」などの翻訳書、今年になって、『運命がわかるBIRTHDAY BOOK』100万部を刊行している。
株式上場をめざしていたが、危機が書店にも伝わり、大量の返品が生じたこと、債権者による取次の売掛金の差し押さえが今回の措置の原因とされる。だがそれでも書店市場には大量の在庫があるとされ、返品処理をめぐる問題が浮上してきている。
スポンサーを探して民事再生を計っているが、それはまだ未定。

[ 投資ファンドと出版社の関係の破綻を、ゴマブックスの民事再生は告げているのだろう。それは『出版状況クロニクル』でも見てきたが、ABCを経営していた洋販ブックサービスと洋販の持株会社インターカルチュラルグループは、投資ファンドの第三者割当増資の後に、洋販ブックサービスの民事再生、及び洋販の自己破産を生じさせていた。詳細は不明だが、双方とも投資ファンドを介在させたバブル的破綻の一例と言えるのではないか ]

11.  『ジュエリースタイリング』や『季刊TOKYO Jewelers』などの宝石や貴金属関係の出版を行なってきた柏書店松原が自己破産申請。同社の創業は1950年で、75年から同種の出版事業を始め、97年には年商2億5000万円を上げていた。だがリーマンショック後の宝石業界の低迷を受け、業績が悪化していた。

[ 特化した出版社の破産であるが、これもブランド雑誌の休刊と見なせよう ]

12.  マガジンハウスの月刊女性生活情報誌『Hanako WEST』休刊。同誌はグルメショップ情報を中心とする『Hanako』の関西版姉妹誌として、91年に創刊。創刊号は16万部を発行したが、競合誌も増え、近年は6万部で、広告収入も減少していた。

13.  角川マーケティング発行の若い女性向け情報誌『ChouChou(シュシュ)』休刊。93年創刊で、公称発行部数は6万部強。3月に誌面を刷新したばかりだが、部数は盛り返せなかったのだろう。

14.  集英社の女性誌『PINKY』も休刊。10代から20代前半のファッションと美容を二本の柱とする女性誌で、04年8月創刊。創刊号は30万部だったが、この1年間は19万部で、実売70%だったという。

[ 12、13、14の女性誌の休刊は、付録合戦に敗れたと言ってもいいかもしれない。本クロニクル14で言及しておいたように、付録は04年に8608点であったのが、08年には13238点と4630点も増えている。雑誌に付録がついているのが当たり前の状況なのだ。女性誌の場合、ポーチやバッグなどのグッズ付録を競い合っている。
『出版月報』8月号が「雑誌の『付録』最新動向」特集を組み、そこで12種に及ぶ付録を写真入りで紹介している。また「付録も編集の一環」として女性ファッション誌などを発行し、部数を大幅に伸ばしている「宝島社の動き」への言及もある。8月に出した2点付録付きブランドムック(グッズとブランド紹介冊子がセットになった商品)の『Cher 09-10AUTUMN/WINTER COLLECTION』は70万部発行だったとされている。
これらの付録つきは、01年の付録に関する作成上の基準の大幅な緩和から始まっているようだが、すでに雑誌の内容よりも付録競争の時代になってしまったのだ。それらの動向を検証しながら、この付録特集を次のような一文で結んでいる。まっとうな言葉なので、引用しておく。

「付録に限らず、雑誌を売り伸ばすためには、あらゆる付加価値を付けなければならない時代となっている。しかし、付加価値も日常的になれば効力を失う。付録に代わる新たな手段を見つけなければ、手詰まりになる日はそう遠くない。あくまでも雑誌の中身で勝負をしていきたい、という編集者も多い。付加価値が一巡した先に、雑誌が内容で読者に評価される時代が訪れて欲しいものだ。」 ]

15.  リクルートの求人誌『ガテン』休刊。91年創刊で、首都圏を対象とする土木、建築などの技術職に特化した求人誌で、肉体労働を意味する「ガテン系」なる流行語は同誌から生まれたものである。

[ これもやはりリーマンショック以後の景気減退による建築業界などの失速の影響を受け、求人数が大幅に減少していることの表われであろう ]

16.  『新文化』(9月17日)が平安堂の新社長平野伸二郎にインタビューしている。彼はアメリカでMBAを取得し、粗利益率が35%もあるというテキサス州のメディア複合書店でのインターンシップを経て、平安堂に入社したという。アメリカでは普通であるにしても、日本の書店ではもちろんのこと、出版業界でも異色の経歴であり、その経営の行方を注視したいと思う。
しかしそれよりもこのインタビューで目を引いたのは、サイドラインの中核となっている古書事業である。『出版状況クロニクル』で、平安堂が勝木書店、金高堂、田村書店とともに進めている古書事業BBAに何度も言及してきたが、単に古書買取り、販売だけでなく、専門書古書店ともタイアップしているようなのだ。それが古書棚の掲載写真からうかがわれるので、調べてみた。

[ 本クロニクル15で、ブックスタマ福生店における、八王子古書チェーンの「ブックセンターいとう」のジョイントを報告した。
さて平安堂だが、「専門古書店セレクト」棚が設置され、そこには麗文堂書店(市ヶ谷)、りぶる・りべろ(吉祥寺、現神田)、古書肆マルドロール(さいたま市)、書肆砂の書(京都市)が出品している。
これはリブロから平安堂に移籍した今泉正光の企画で、彼の人脈から招かれたのである。りぶる・りべろ以外の3店はいずれもリブロ出身者が営む古書店なのだ。それが平安堂の古書事業と結びついたことになる。しかしその今泉も退職したこともあり、専門書店とのジョイント古書事業がどうなるか気になるところだ。
リブロ出身者たちの古書店、各地で開催されている一箱古本市、最近の伊那市高遠町でのブックフェスティバルは、21世紀に入ってからの新たな古書ムーブメントと考えられる。それらについては稿をあらためたい ]

17.  ブックオフが自由価格本コーナー「B★コレ!」を昨年10月から始めているが、現在170店まで拡大しているようだ。
その動きは文教堂、三洋堂、丸善、紀伊国屋までコーナーや催事イベントとして拡がっている。ネットの楽天ブックスも料理本など200〜250点を揃えている。
自由価格本の仕入れ価格は明らかになっていないが、30%から70%オフの価格から判断すれば、1掛けから5掛けと考えられる。大阪屋の自由価格本子会社大阪屋商事の取引先出版社は70社、書店は70店に及んでいるという。

[ これはすぐに書くことはためらわれたが、かなり時間が経ち、知られ始めていると思われるので書いておく。
本クロニクル13で、学燈社の『国文学』の休刊を伝えたが、その増刊号から始まった別冊特集の10種ほどが、ブックオフの「B★コレ!」で平積みで売られていた。価格は半額だったから、それなりに資金繰りに貢献したかもしれない ]

18.  続けてブックオフだが、11月に名古屋の郊外型ショッピングモール「カインズモール名古屋みなと店」の二階に、ワンフロアで新刊書店とブックオフをジョイントさせた1500坪の大型複合店を出す。新刊書店はABCかワイシーシーの出店を検討中だという。取次は日販。

[ これは本クロニクル16で既述したブックオフの新しいブランド名の「ブックオフバザー」の第2号店で、9月12日に開店した大船の第1号店は、初日売上高が1127万円に達し、グループの複合店としては過去最高だったとされている。
DNPグループによる株式買収が後ろ盾になって、「スーパーバザー」の多店舗化が続けられていくだろう。今さら言うまでもないが、その成長は疲弊しきった書店への容赦ない打撃となるだろう ]

19.  アマゾンが本やコミックなどの配送料を、9月11日から11月4日までの限定で、無料としている。延長も予定しているという。従来は1500円未満の場合、配送料が300円かかっていた。
それは楽天ブックスがCD、DVDなどを含む約200万点を対象として、今年2月から11月4日まで実施している配送料無料化に対抗するものである。

[ 実は楽天ブックスの配送料無料化を知らずにいた。私は諸星大二郎のファンで、『アダムの肋骨』(奇想天外社)からずっと読んでいるのだが、新刊の『西遊妖猿伝西域編』1が見当たらないと息子に話したところ、彼が楽天ブックスを通じて送ってくれた。それで楽天ブックスの配送料無料化を知ったのである。
これは税込みで750円であるから、普通に考えれば、採算が合うはずもない。特別正味になっているとも思われないので、おそらく配送料がグロス換算でダンピングされているのであろう ]

20.  五木寛之の『親鸞』が中日新聞や東京新聞を始めとする地方新聞27紙に同時連載されている。これは12月に講談社から刊行される。だがその一方で、新聞社も単行本を扱い、新聞販売店ルートで販売することになっている。
講談社版は上下各巻1500円だが、新聞社版は1600円で100円高く、そのことで連載時の挿絵40枚が収録され、文字も大きいようだ。各新聞社は11月までに読者の予約を募り、講談社に発注し、つまり新聞社が取次を代行し、新聞販売店に卸すのである。

[ 現在のところ、参加新聞社はまだ確定していないが、これは書店がない地域でも新聞販売店ルートで読者に届けたいとする五木寛之の強い希望があってのこととされている。
来年は親鸞没後750年とあって、各地の百貨店で親鸞展が開催され、講談社も創業100周年の目玉企画でもあり、パフォーマーとしての五木の健在ぶりを示す好例だろう。しかし流通販売に対する五木の異例の提言は、出版危機の影響をもろに受け、作家たちの上に重苦しくのしかかっている暗雲をはらおうとする行為のように映る。
だが講談社と新聞社の正味問題はどうなっているのであろうか ]

21.  先月号も紹介した『クーリエ・ジャポン』10月号が「活字メディアの未来」第3弾として「雑誌が『消える』日」特集を組み、アメリカ、フランス、英国の雑誌の現在をレポートしている。リードは「人々の娯楽媒体が多様化し、出版不況が急激に加速している。雑誌というメディアは、『過去のもの』になってしまうのだろうか」。

[ 欧米の雑誌業界も不況に見舞われ、またネットやフリーマガジンとの競合もあり、休刊や廃刊が続いているようだ。特集の読みどころは「米国雑誌業界を牛耳ってきた『コンデナスト帝国の黄昏』である。コンデナストは日本でたとえれば、会長が雑誌フリークで、伝統とする美学を保ち、それに加えて雑誌コングロマリット化したマガジンハウスのような出版社と見なせるだろう。次の流行を見すえ、惜しみなく資金を投じ、毎年新雑誌を創刊し、雑誌の黄金時代を築いてきたコンデナストも相次ぐ廃刊と売上減少に襲われ、経営に陰りが出てきた状況が伝えられている。
アメリカで好調な雑誌は経営情報コンテンツが充実している。『エコノミスト』のような経済誌で、これは日本とまったく同じ現象だと言えよう。
フランス雑誌界も発行部数は減り続けていて、仏版『クーリエ』編集者も次のように語っている。

「日刊紙が売れなくなったことは、すでに数年前から言われているが、ここ数ヵ月間で休刊が相次いでいる雑誌も他人事ではない。この“危機的状況”においては、いま生き残っている雑誌もいつまでこの不況に持ちこたえられるか定かではない。つい最近まで雑誌を最良の広告媒体と考えていた広告主でさえ、雑誌への関心を失いつつある。編集者は不機嫌そうな顔つきになり、ジャーナリストは自分の将来を心配し始めている。こうした状況を打開すべく、誰もが“特効薬”を模索しているが、希望を見出すのは容易ではない」

フランスも日本も雑誌出版社は全く同じような状況に置かれているのだ。それならば、日本における「特効薬」は何なのだろうか ]

22.  イトーヨーカドーが店舗内に開設していた「子ども図書館」が9月で閉館し、31年の活動を終える。「子ども図書館」はイトーヨーカドーがメセナ事業として、児童書出版社の童話屋に運営を委託して開館したもので、静岡県沼津市の店舗に初めて設けられた。これまで15館が設置されたが、徐々に縮小し、現在は8館になっていた。来館者の減少が閉館の理由とされている。

[ メセナ事業としての一定の役割を終えたこともあるが、年間維持費は1億円を要していたことからすれば、リストラの一環とも考えられる。
経済不況によって、目には見えないが、様々な出版に対する企業のメセナ活動も縮小しつつあるのだろう。出版危機に加えて、これらのメセナからの撤退で、司書ばかりでなく、出版関連の仕事に携わっている人々、つまり編集プロダクションの人々、フリーランスの編集者、ライター、デザイナー、校正者などの仕事が急速に減少していると思われる ]

23.  9月から、主として読書メモなどをブログ「出版・読書メモランダム」に移しました。よろしければ、お出かけあれ。

つづきはこちら。

小田光雄の著書

出版業界の危機と社会構造
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出版社と書店はいかにして消えてゆくか
出版社と書店は
いかにして消えていくか
ブックオフと出版業界
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古本探究
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出版状況クロニクル
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